親が所有していた自宅や収益物件を相続により所有し、空き家にしてしまっているケースは年々増加しています。国道交通省「平成26空き家実態調査」によると、空き家数は1993年~2013年の間で約1.8倍に。空き家を所持している人半数以上は相続がきっかけで空き家を所有することになったようです。総務省による「平成25年住宅・土地統計調査」によると、空き家の種類別内訳は賃貸用の住宅が半数以上を占めています。ここでは、空き家がなぜ社会問題にまでなるのか、空き家を持っている人はどうすべきかを考えてみます。
空き家にはデメリットしかない
相続人が遠方に住んでいるので居住する必要性がない、投資用物件にしようと思ってもリフォーム代がかさみ採算が合わない、賃貸ニーズのないエリアに空き家があるなどが空き家のまま放置してしまう、おもな理由です。 空き家には次のようなリスクがあります。
固定資産税がかかる、または増加する
「固定資産税がかかるから空き家になっても家を建てておこう」と思っている人、これは間違いなので考えを改めてください。この考え方は、以前は通用しましたが、近年、放置された空き家にかかる固定資産税が上がったのです。
今までは空き家か居住者のいる住宅かに関わらず、住居が建てられていれば ・200㎡以下の住宅用地なら固定資産税は6分の1、都市計画は3分の1に減額 ・200㎡以上の住宅用地なら固定資産税は3分の1、都市計画税:3分の2に減額 と定められ、一律に固定資産税・都市計画税の減額が適用されていました。
しかし、2015年5月からは「空家等対策の推進に関する特別措置法(以下、空き家と呼びます)」が施行されました。空き家が「特定空家等」に認定されると減額はなくなる仕組みになったのです。
「空き家対策特別措置法第2条第2項」によると
・老朽化から倒壊のおそれのある状態
・ゴミの放置などで衛生上有害となる状態
・著しく景観を損なっている状態
・周辺の生活環境のために放置することが不適切な状態
のいずれかに該当すると 「特定空家等」に認定される可能性が高くなります。
空き家があると犯罪や災害のリスクが高まる
積雪があった際に、空き家の屋根に積もった雪のせいで、建物が倒壊する、雪が屋根からすべり落ち、通行人にけがをさせた、というニュースが耳に飛び込んでくることがありますね。
もし、あなたが所持している 空き家で事故や災害、犯罪があったらどうでしょうか。空き家を放置していたことを理由に、被害者から損害賠償請求をされてしまうかもしれませんし、空き家がつぶれてしまったら、解体撤去費用として数百万を支払わなくてはいけなくなるかもしれません。
空き家があることで犯罪や事故のリスクは高くなるので注意が必要です。
空き家が周辺エリアの価格相場を下げてしまう可能性がある
住宅を査定するとき、周辺で販売されている物件や、すでに売買契約が成立した物件を調べ、価格付けをします。加えて周辺の景観や「街の雰囲気」なども査定価格に加味したりします。
もし、周辺エリアに空き家が多ければ、当然イメージが悪くなりますので、査定価格は低くなります。あなたが、家を売却しようとしたときに、空き家のせいで安く査定されたら嫌な気持ちになりますね。このことから、空き家を放置しておくのはマイナスであると言えます。
もちろん、空き家自体の査定の際も、放置しておけば査定額はさがります。
具体的な有効活用は?何をすればいい?
有効活用をしたことがない人は「売る」「貸す」「自己活用」の3つから選ぶとよいでしょう。ほかにも「土地信託」や「等価交換」という選択肢があります。自信のある人はこれらの方法も検討しましょう。
売却
まとまったお金が入り、固定資産税を支払う必要もない売却ですが、継続的な収入がないのはデメリットです。売却時に諸費用がかかりますので、予め計算しておくべきです。
売却時にかかる、おもな費用は
・仲介手数料(売買金額が400万円以上なら(売買金額の3%+6万円)+消費税が手数料の上限)
・抵当権抹消費用(数万円のことが多い)
・譲渡所得税(所有期間が5年超の長期譲渡所得で20.315%、所有期間が5年以下の短期譲渡所得で39.63%)
・引き渡しの時に発生するクリーニングやリフォーム代、解体
などです。税法上の減免制度が多くあるので、専門家に相談しながら節税に努めましょう。
賃貸住宅として活用する
賃貸需要があるエリアに空き家がある場合は、賃貸住宅として貸し出してみてはいかがでしょうか。住宅街に物件がある、駅や学校、商業施設に近いなら、入居者がすぐに見つかる可能性が多いです。
まずは、不動産会社に行って募集してもらえるか相談しましょう。不動産会社が用途地域や建蔽率などの調査を詳しくしてくれます。違法建築の場合もあるので、しっかり調査した後で募集してもらうのがベターです。
遠方に住んでいる、サラリーマンで時間がない、という場合は不動産会社と管理委託契約を結ぶことをおすすめします。入居者トラブルなどは、いつまでも解決しないケースが多いので、プロに任せるべきです。
自己活用する
更地にして、太陽光発電やコインランドリー、トランクルームなどを設置し、収益を得る方法もあります。
太陽光発電
「太陽光発電はもう、儲からない」と思っていませんか。確かに、太陽光発電で発電した電気の余剰分を10年間同じ金額で買い取る「余剰電力買取制度」は2019年に満了し、該当者は売電先を新たに決めるか、蓄電池などを使い自家消費するかの選択を迫られています。
しかし、これから新たに投資する人にとって、このことは、それほどマイナスにはならないと思います。 太陽光発電の性能が10年前と比べて向上しているので、たとえ買い取り価格が安くても利益が得られる可能性はあるからです。周辺調査、設備の価格調査、収支計算をきちんと行えば利益は出せるのです。
トランクルーム経営・コインランドリー経営
これらの手法は賃貸住宅を建てるよりもコストがかからないのがメリットです。
トランクルームは、住宅を建てるときやコインランドリーを設置するときほど、立地や周辺環境に左右されないのがメリットです。専門業者に土地を一括借上げして、運営いてもらう方法と、トランクルームを自身で購入し、管理だけを業者に頼む方法があり、後者のほうがハイリスク・ハイリターンです。
コインランドリー投資は、駐車場が数台確保できるくらいの土地でも運営できるのがメリットですが、設備の導入費は駐車場経営やトランクルーム経営にくらべ高額になります。 周辺環境で客入りが決まりますので、リサーチが重要になってきます。
駐車場経営
駐車場経営は、イニシャルコストが安価ですし、管理も手がかかりません。店舗を建てるなど、事業目的の建物を作りたい人に土地を貸すと、「借地借家法」により、解約が難しくなりますが、駐車場は借地借家法の適用対象外なので、解除しやすくなります。
賃貸住宅経営やコインランドリー経営に比べて立地を問わないのもメリット。用途地域制限などの法規制もそれほど厳しくないので初心者にもおすすめです。
しかし、固定資産税、相続税評価は更地評価になってしまい軽減措置が適用にならず、減価償却費もないので、経費計上額が少なくなり、所得税が課税される部分が大きくなるのがデメリットです。
まとめ
空き家を所持しているだけで、固定資産がかかりますので、不動産が「負動産」にならないよう、土地活用を行うべきです。土地の特性によって、太陽光がいいのか、駐車場がいいのか、活用方法が自然に決まってきます。自分の持っている土地のリサーチを行い、優遇税制も調べ、あなたにぴったりの土地活用を見つけましょう。
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