もしも、あなたが実家を相続したらどうしますか?相続税の納付金は決して少ない額ではありまんので、マイホームを購入するどころではなくなってしまいます。 相続税の課税範囲を実質的に拡大した2015年度以降、「我が家は自宅しかないから相続税は納めなくていい」と思っていたのに相続税を申告しなくてはいけなくなったケースが増えています。 とくに、都市部に不動産を保有している世帯への影響が大きくなりました。東京国税局によると、税制改正の翌年(2016年)は、相続税課税割合は12.8%と、相続が発生した人のおよそ7人に1人が課税対象となりました。
自分は長生きすると思っている親なら、相続税を支払う可能性あり
税制改正前は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」までが非課税でしたが、2015年の改正で「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に変更されました。夫婦と子供2人の4人家族で夫が亡くなった場合、基礎控除額は8,000万円から4,800万円に縮小されてしまいます。 4,800万に控除額が縮小すると、都市部に自宅があり預貯金や株式、保険などの金融資産をある程度持っていれば、一般的な家庭でも申告が必要になる可能性があります。
近年は、長寿化に備えて老後のための金融資産を用意している人が増えています。「自分が長生きするから金融資産を残そう」と努力している親を持っているなら、親が亡くなったときに自分は相続税を納付する可能性があると考えたほうがよいでしょう。
小規模宅地の特例と配偶者控除で納付金ゼロの可能性がある
相続税の申告をしても、金銭の納付はせずに済むケースがあります。「配偶者の税額軽減」と「小規模宅地等の特例」という特例制度を使うのです。配偶者には、法定相続分、もしくは1億6,000万円のどちらか大きい金額までは相続税が免除される制度があります。
「小規模宅地等の特例」とは、被相続人が暮らしていた住まいや、経営していた店など事業用の不動産、もしくは貸し出していたマンションなどの土地の相続税評価額を80%軽減できる制度です。 「小規模宅地等の特例」は、敷地面積や被相続人との続柄などで一定の要件を満たした場合に限り適用されますが、要件は複雑です。被相続人が暮らしていた自宅の場合、評価減されるのは敷地面積100坪(330平方メートル)までで、誰が相続するのかも要件になります。
夫が亡くなった家の場合、その家で同居していた妻や子供が相続する場合は、80%軽減の対象になりますが、実家から独立してマイホームを購入した息子が相続すると、特例は使えず、土地の相続税評価額がそのまま課税対象になるのです。つまり、マイホームを購入してから実家を相続すると、控除額が少なくなってしまいます。
相続税納付を避けたいなら、生前に財産目録の作成を
相続時に税の納付を避けたいならば、自分の親に、財産目録の作成をお願いしておくのが賢明です。どのくらいの財産を持っているかは、親が亡くなってからでは、調査に時間がかかり、遺産分割協議の期限(10カ月)があっという間に過ぎてしまいます。
財産の整理を生前にしておいてもらえば、万が一相続が発生した際、残された家族の負担は軽くなります。 また、目録をもとに、課税対象額を試算することが可能です。小規模宅地の特例を使わなくても済むことが予め分かっていれば、安心してマイホームを購入することもできます。
小規模宅地等の特例を使うなら、細かな要件が多いため、試算の際には、税理士などの専門家に助言を受けることをお勧めします。
まとめ
「相続への準備はお金持ちのするもの」と思って居る人が、未だ少なくありません。しかし、上記のように、相続税の申告・納付の可能性は誰にでもあるのです。親や自分が亡くなったとき、どのように相続の手続きが進められるのかを、生前に十分検討しておくことが必要です。
ファイナンシャルプランナー(AFP)吉井希宥美
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