2018(平成30)年7月、1980年以来40年ぶりに、相続に関する民法の改正が行われました。その中で配偶者に関する事項は、長寿社会を配慮し行われたものになります。結果的に配偶者によって有利な法律になったと言われています。今回は「配偶者居住権」「配偶者短期居住権」について、法改正の詳細を紹介します。
配偶者居住権
配偶者居住権(改正民法1030条)は、配偶者は相続開始後から亡くなるまで、住んでいる家に「無償」で住み続けられる権利です。2020年7月12日までの政令で定める日に施行されます。
相続開始のときに居住していた配偶者のみに認められ、・遺産分割 ・遺贈・死因贈与 ・家庭裁判所の決定 のいずれかによって成立し、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合には認められません(改正民法1028条1項1号・2号、1項ただし書、1029条、現民法554条)。
建物の所有者は、配偶者に対し、配偶者居住権の設定の登記を許可しなくてはなりません。(改正民法1031条)。
配偶者短期居住権
相続開始の時に無償で居住していた配偶者が、遺産分割終了の日か相続開始の時から6カ月を経過する日のいずれか遅い日まで、従来どおり居住することができる権利です(改正民法1037条1項)。
配偶者居住権、配偶者短期居住権を行使すると何が起こる?
次のケースを見てみましょう。
・3,000万円の自宅と3,000万円の預貯金が遺産としてある
・配偶者と子ども2人が相続する
現行の民法に従って遺産分割を行うと
・配偶者は不動産や金融資産を含めたすべての遺産の1/2が法定相続分となる。
・遺産の中に自宅も含まれる
・自宅を配偶者が相続すると、残った3,000万円の預貯金は子ども2人で1,500万円ずつ分けることになる
このままでは、配偶者は自宅を相続できても、現金の取り分はゼロとなり、生活が心配になってしまいます。
新民法は、このような不都合を生じさせないために、制定されたのです。相続発生後も配偶者は安心して自宅に住み続けられ、かつ、生活資金の確保もできるようになります。
この事は、その住宅を担保にとっていた人にとっては新たなリスクとなります。担保権者と配偶者居住権を取得した生存配偶者との間でどちらが優先するかは、登記の先後で解決します。しかし、この物件を売却しようとしたときに、家賃ゼロの収益物件を購入する人がいるのでしょうか?
まとめ
これらの法律は、まだ施行されていませんが。、配偶者にとって有利な法律には間違いありません。担保権者との関係が気になるところですが、今後どのようになるのか、こちらのブログでも追って紹介したいと思います。
コメント