所有者不明地を売却できる日がくる

共有持分 不動産投資
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土地の所有者が複数の場合、今までは、すべての持ち主の同意が得られないと、売却・賃貸ができませんでした。しかし、一部、持ち主が分からない土地は国内にたくさんあり、そのような土地は売却・賃貸ができず困っていました。そこで、国土交通省と法務省は、一部持ち主が分からない土地について、売却や賃貸ができる仕組みを作ってきました、今後さらに、所有者不明土地が私たちに取って身近になりそうです。

 

持ち主が分からなくても売却・賃貸できないのはなぜ?

土地の売却や賃貸に関しては、民法でルールが定められていますが、持ち主が分からないと、ルールにのっとり売却・賃貸ができなくなります。また、売却・賃貸ができないと、本人の家族だけでなく、私たちの生活にも影響が出ることがあります。

売却・賃貸の同意の割合が民法によって定められている

不動産を相続した場合に、名義変更を長年行っていなかったため、誰が相続したか分からなくなってしまうケースがあります。不動産を売却する、賃貸に出すなどする際は、民法によってルールが決められています。不動産を複数の人により「共有」している場合は次のようなルールがあります。 1-1-1 売却 「処分」にあたり、共有者全員の同意が必要 1-1-2 賃貸 「管理(有物の使用・利用・改良行為)」にあたり、共有者の過半数の同意が必要 もし、共有者が3人で、不明の所有者1人だったら賃貸はできても売却はできないのです。自分の持ち分だけ売却することは理論的に可能ですが、使いにくいなどのことから、実際に売却は難しいでしょう。

土地を収益・処分できないと街づくりにも影響がある

国土交通省から発表されている「所有者不明土地の実態把握の状況について(平成28年度)」によると、10万筆をサンプルとし、国土交通省と法務省調査がそれぞれ調査した結果を活用し、推計すると、所有者不明率は3割にも及ぶようです。 また、「所有者不明土地問題研究会」による「地籍調査を活用した推計」では、所有者不明の土地面積は、 約410万ha。九州の土地面積・約368万haよりも多くの土地が所有者不明になっていることになります。(計算方法は「所有者不明土地の実態把握の状況について(平成28年度)」を確認して下さい。)このことは、相続の面だけでなく、街づくりの観点からしても問題があります。 公園や大規模施設を作ろうとしたときに持ち主が分からないと、行政が計画地を思うように取得できず、計画倒れになってしまう可能性があります。これでは、住民にとって、良いと思われる施設を作ることができず、住みよい街づくりができません。

今後不動産市場はどうなる?

2.今後不動産市場はどうなる?国交省と法務省は所有者が見つからない土地の活用を進めるため、住所や連絡先が分かる一部の所有者によって、土地の売却や賃貸ができる仕組みを作ろうとしています。2020年の通常国会に関連法改正案の提出を目指す予定です。 金銭の供託で売却時の問題を解決売却の場合、共有者が不明所有者の持ち分について金銭を法務局に供託することで、ほかの共有者が土地を取得する仕組みを作ります。土地の賃貸や盛り土などの「管理行為」については、不明となっている人以外の残りの所有者の承諾で、行為を可能にします。 ただし、手続きを行う際は、登記簿や固定資産課税台帳などの調査、行政機関や親族らへの聞き取りなどを行い、不明所が突き止められないかったことが前提となります。ほかの所有者が異議を申し立てることができるように、政府や公共団体が一般に知らしめる「公告」をすることも行わなくてはなりません。 好立地の不動産が手に名入り、環境改善にもなる

売りたくても売れなかった土地が、今後販売される可能性が出てくることは、土地探しをしている人にとっては朗報です。土地選びの際、選択肢が増えることは自分の希望通りの物件に巡り合う可能性が高くなるからです。 また、所有者不明の土地は地方の山林が多いのですが、宅地も少なくありません。宅地の売却・賃貸ができないと、空き家や荒れ地が住宅地に点在することになり、周囲に悪影響を及ぼしてしまいます。売却できなかった土地が公園や施設、住宅になることで、環境がよくなれば、街としての価値もアップするでしょう。

まとめ

不動産登記簿の所有者が不明なものをなくすため、2019年5月17日、「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律」が成立、同24日に公布されました。登記官には2019年11月1日から所有者の探索のため調査権限が与えられ、不明者の登記について特例が施行されました。2019年11月1日から所有者不明の土地は裁判所の選任した管理者が管理できるようになりました。今回の仕組みづくりにより、更に所有者不明地の売買が身近になってくるでしょう。

ちなみに祖父A(死亡)→相続人父B(死亡)→子どもCの場合で、A-Bの相続登記を行っていないのにCへの相続登記が必要になったケースにおいて、平成30年度税制改正では、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に死亡した人Bを登記名義人とするために受ける当該移転登記に対する登録免許税は免税としています。

 

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代表 吉井希宥美
群馬県高崎市で不動産会社をやっています。
一般的な不動産会社ではなく、コンサル重視の会社です。
1人の顧客に寄り添い、相続やライフプランを見据えた提案を行っています。そのため、通常の賃貸売買のほか、投資案件、用地入れも致します。
DX化の時代に、顧客との「コミュニケーション」、つまりアナログを重視し、皆様の要望にお応えできるよう、日々研鑽しています。

宅地建物取引士、AFP、家族信託コーディネーター®、相続実務士を所持する不動産コラムニスト。不動産取引や相続相談を行いながら、執筆を手掛ける。

日本女子大学卒。フリーライターとして13年活動したのち、住宅関係の仕事に関わりたいと不動産会社に就職。売買、賃貸仲介、賃貸管理など、幅広い業務を経験。現在は、不動産の実務に関わりつつ、不動産コラムを執筆、相談業務やセミナーも行っている。幅広い不動産知識とライター時代に培った「ヒアリング力」で要望を聞き、お客様のためになる「住まい方」を提案する。近年は相続の絡んだ案件の相談業務も行っている。
理想の住まい、理想の生き方を探す方の手伝いをしている。
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