住宅ローン控除と個人確定拠出年金(以降、iDeCo)は、どちらも節税メリットがありますが、控除の金額と拠出金額のバランスで、住宅ローン控除のメリットがフルに活かせなくなる場合があります。2つの控除は「どの段階で控除するか」が異なります。
iDecoでは、課税所得から年間に支払った拠出金額全額分を差し引きます。そこから税金計算を行い、算出した税額から住宅ローン控除を差し引きます。そのために、両方使うと損をする人が出てきてしまうのです。
まずは、2つの控除の仕組みを知る
最初にiDeCoと住宅ローン控除の内容について、もう一度確認しましょう。
iDeCoの仕組み
iDeCoは、老後の資金を作るため積立投資を行うものです。拠出金が全額控除になることから節税効果があります。運用益も非課税になり、受け取り時も税制優遇されお得です。また、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」が適用になります。
運用にあたっては、運営管理機関の手数料などがかかり、拠出額の上限は運用機関によって異なります。
a.自営業者などの「国民年金第1号保険者」なら
国民年金基金と合算で6万8,000円/月(付加保険納付者は6万7,000円/月)
b.会社員が加入できる「国民年金第2号保険者」なら
1)企業年金なし、企業型確定拠出年金なし 2万3,000円/月
2)企業年金なし、企業型確定拠出年金あり 2万円/月
3)企業年金あり 企業型確定拠出年金あり、なしに関わらず一律1万2,000円/月
4)公務員 1万2,000円/月
が限度額です。下に図をまとめたので参考にしてください。
住宅ローン控除の仕組み
住宅ローン控除は、年末の住宅ローン残高の1%が税額から10年間または13年間控除される制度です。控除を受けるためには、年収が3,000万以下である、住宅ローンの返済期間が10年以上あるなどの要件を満たす必要があります。
対象者は2009年から2021年12月末までの間に入居した人でなら、所得税額から住宅ローン控除しきれないとき、住民税から残りの額を差し引くことができます(上限あり)。住民税からの控除は手続きを必要とせず、自動的に手続きされます。
実際に計算してみる
下記の条件の人は両方の制度を適用すると損になるか、実際に計算してみましょう。
・課税所得300万円
・(所得税率10%) 所得税額 20.25万円
課税所得300万円の例(所得税率10%)
所得税額 20.25万円
iDeCoを始めた場合の所得税 ▲2.4万円
所得税の残額 17.85万円
住宅ローン控除 ▲25万円 (所得税の納税額 0円)
控除しきれなかった住宅ローン控除▲7.15万円
住民税からは13.65万円まで引ける⇒全額控除できる!
(給与所得控除はhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm
を参照してください。)
このケースでは、住宅ローン控除も引けました。
住宅ローンをたくさん借りて住宅ローン控除が大きければ結果は異なる可能性があります。 また、実は課税所得が下がると、iDeCoと住宅ローン控除は有効に引ききれないケースが増えます。控除が多かったり、ふるさと納税などをたくさんやっていて納税額が少ない人も同様です。住宅ローン控除とiDeCoの控除があってさらにふるさと納税もという場合は、試算しつつ利用しましょう
両方のメリットを活かすために
住宅ローン控除の枠をすべて使いきれない人は、高所得ではないが、借入額が多い人です。両方のメリットをフル活用できないなら、住宅ローン控除を優先させるべきです。そして、iDeCoではなく、つみたてNISAを利用したらいかがでしょうか。iDeCoと異なり、好きな時に引きだしができるので、いざという時にも役立ちます。
住宅ローンを組む前ならば、夫婦二人に分けてローンが組める「ペアローン」にするという選択肢もあります。それぞれに住宅ローン控除が使えるために、iDeCoと併用しても住宅ローン控除のメリットが活かせます。
まとめ
まずは、自分がどんなパターンに当てはまるかを知るために試算してみてください。税金のしくみは、国の政策で、ここに挙げた税率から変更になる、制度が新設されるなど、各制度が複雑に絡み合い、とても複雑です。専門家に相談し、自分がメリットを十分に受けられるよう検討することが大事です。
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