国土交通省は、2021年12月24日に「住宅ローン減税」について、政府・与党は4年間延長したうえで、現在、年末時点のローン残高の1%としている控除率を、0.7%に引き下げる方向で最終調整を進めていると発表しました。
環境性能を備えた住宅ほど恩恵が
従来の「住宅ローン減税」は、年末時点のローン残高の1%を10年間、所得税などから控除する仕組みですが、低金利が長期化する中、1%を下回る金利でローンを組んだ場合、支払う利息よりも多くの控除が受けられるため(これを「逆ざや」と言います)、不必要なローンの利用につながっているという指摘がありました。これを受けて政府・与党は、控除の在り方などを見直したうえで、期間を4年間延長し、令和7年末までに入居した人を対象にする方針を固めました。そのうえで、現在1%としている控除率は、年末時点のローン残高の0.7%に引き下げる方向で最終調整を進めています。
消費税率の引き上げに伴って拡充している一般住宅の場合、4000万円となっている控除対象の借り入れ限度額については、再来年の入居分までは3000万円に引き下げるとしていますが、原則10年としている減税慰安を13年とする措置は継続します。適用対象者の所得要件も現行の口径所得3,000万円以下から2,000万円以下に引き下げられます。このことで、富裕層ほど高額ローンを組むことができ、減税効果が大きくなります。
カーボンニュートラルを目指すため、住宅の環境性能等に応じた借入限度額の上乗せを行う予定です。これは、既存住宅を含めて、となります。
新築住宅の床面積要件は、合計所得が1,000万円以下の人に限って、2023以前に建築確認を受けたものは、40平方メートル以以上に緩和となります。また、贈与税非課税措置は、良質な住宅は、1,000万円、その他の住宅は500万円としたうえで、適用期間を2年延長します。ローン減税が2022年に改正されると、住宅ローンの借り方が以下のように変わる可能性があります。
これからどうなる?家選び
住宅ローン税制が変わることは、どのような影響があるのでしょうか。
全期間固定金利を選択する人が増える
住宅ローン減税が改正された場合、金利が基本的に1%を超えている全期間固定金利型で借り入れると、控除額が「年末残額の1%」となりやすく、変動金利よりも節税効果を得られる可能性があるため、全期間固定金利で借り入れる人が増えると予想されます。
全期間固定金利とは、住宅ローンの金利が固定されており完済まで変わらない金利タイプです。全期間固定金利で住宅ローンを組むと、返済途中で市場の金利が上昇しても、毎月の返済額や利息額は変わりません。全期間固定金利型は、現在、1%前後です。返済負担が変わらないという点が安心である一方、返済負担が変動金利よりも重くなるためか、変動金利を選択した人のほうが、全期間固定金利を選んだ人のほうが多いのが現状です(住宅金融支援機構「住宅ローン利用者調査(2020年11月調査)」による)。
しかし、今後は、全期間固定金利で借り入れる人が増えると予想されます。
団体信用生命保険の保障を手厚くする人が増える
銀行で住宅ローンを借り入れる場合、団信への加入が借入条件である代わりに、多くの場合で保険料は金融機関負担ですね。団体信用生命保険(以下、団信)とは、 住宅ローンを借り入れた人が亡くなったときや所定の高度障害状態になった場合に、残債が0円となる保険です。特約を付帯することで死亡と高度障害に加えて、がんや三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)なども保障の対象にでき、(特約を)付帯する場合は、住宅ローン金利に0.1〜0.3%程度を上乗せする形で保険料を支払います。
住宅ローン減税が改正された場合、特約の保険料を税金の還付という形で取り戻せる可能性があります。そのため、団信に特約を付帯して保障を手厚くする人が増えると考えられます。
保証料を金利上乗せで支払う人が増える
保証料とは、保証会社に対して支払う手数料で、「住宅ローンの借入時に一括で支払う」もしくは「住宅ローンの金利に0.2%を上乗せして支払う」、どちらかの方法で支払います。
住宅ローンの返済を長期間にわたって滞納すると、保証会社が金融機関に残債を一括返済(代位弁済)してくれる、保険のような仕組みです。しかし、保証会社が、住宅ローンを代位弁済したからといって、住宅ローンを借り入れた人の返済義務がなくなるわけではありません。滞納すると家は差し押さえになり、競売にかけられます。
この場合も、住宅ローン減税が改正された場合、特約の保険料を税金の還付という形で取り戻せる可能性があります。
コメント