土地や事業をしていた土地について、その全てに相続税が満額かかってしまうと、それを引き継ぐ相続人が住む土地や事業をする土地を失うというリスクを少しでも減らそうという目的から生まれた「小規模宅地等の特例」。令和元年税制改正により、要件が少し変わりました。
小規模宅地等の特例・おさらい
まずは、基本的な内容を再確認しましょう。
1億円の土地について、小規模宅地等の特例を使えなければ3,000万円の相続税がかけられたとします。 小規模宅地等の特例が使えれば、相続税は600万円で済んでしまいます。 引き継ぐ土地の価値は変わらないのに、相続税を抑えることができるのが、この制度の特徴です。 この制度の一部が、令和元年の税制改正で一部改正されました。辞際に
対象となる土地は3種類に分類
小規模宅地等の特例には、
1.自己居住用地住んでいた土地
2.事業をしていた土地
3.貸していた土地
の3種類に分けられます。
1.自己居住用地(住んでいた土地)
<亡くなったとき、どのように使っていたか>
・特定居住用宅地等の対象となるのは、亡くなった人又は亡くなった人と同じ生計の親族(=亡くなった人と同じ財布で生活していた親族)が住んでいた土地でなければなりません。
・亡くなった人が老人ホームに入居していた場合でも、亡くなった人が要介護認定を受けていた場合等の要件を満たす場合には、もともと住んでいた土地を亡くなった人が住んでいたものとして考えることができます。
・亡くなった人が住んでいた土地の上の建物は、必ずしも亡くなった人が所有している必要はありません。 建物の所有者が親族であれば、特定居住用宅地等に該当します。 (土地=亡くなった方の所有、建物=親族の所有)
※例:
親は東京に住んでいて、その息子が京都の大学に通学するため、親所有のマンション1室に住んでいて、親からの仕送りで生活していた場合
→
京都のマンションは特定居住用宅地等に該当。
<取得条件>
ア)亡くなった人が住んでいた時
・配偶者
・同居親族
・家なき子(第三者所有の建物に賃貸暮らししている人。詳細は省略)
のみが適用対象となります。
イ)生計を同一にしていた親族が住んでいた時
・生計一親族
・亡くなった人の配偶者
※そこに住んでいなくても、配偶者が住んだ土地は、特定居住用宅地等に該当します。
<申告期限等>
取得した土地を相続税の申告期限まで所有し続けたり、居住し続けたりする必要があるということです。配偶者には要件がありません。
<限度面積及び減額割合>
① 特定居住用 限度面積 330㎡ 減額割合 80%
② 特定事業用(特定事業用宅地又は特定同族会社事業用宅地)
限度面積 400㎡ 減額割合 80%
③ 貸付事業用 限度面積 200㎡ 減額割合 50%
が原則ルールです。
例:
•相続税評価額:5,000万円
•地積:400㎡ ならば、
小規模宅地等の特例適用額は3,300万円
計算式:5,000万円×330㎡/400㎡×80%
※定事業用宅地等と一緒に適用する場合
・完全併用が可能
・最大で730㎡まで小規模宅地等の特例の適用が可能
・ 貸付事業用宅地等と一緒に適用する場合…200㎡までが限度
例:①特定居住用宅地×200/330+②特定事業用宅地×200/400+③貸付事業用宅地≦200㎡」
特定事業用宅地等
・特定事業用地地等の対象となるのは、亡くなった人又は亡くなった人と同じ生計の親族(=亡くなった人と同じ財布で生活していた親族)が事業をしていた宅地等であることが要件です。
<事業承継要件・どのように使っていたか>
ア)亡くなった人がその土地で事業をしていたとき
・亡くなった人の事業を相続税申告期限までに引き継いでいる
・相続する人は、申告期限まで、その事業を営んでいる
・その宅地等を相続税の申告期限まで有している
ならば、要件満たす
イ)生計を同一にしていた親族がその土地で事業をしていたとき
・相続開始直前から相続税申告期限まで、その土地で事業を行っている
・その宅地等を相続税の申告期限まで有している
※事業とは、不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業および準事業を除く
※平成32年4月1日以降の相続・遺贈により取得した宅地等ならば
相続開始3年以内に新たに事業の用に供された宅地等を除く
=3年以内事業宅地といいます。
↑ここが民法改正で変わったところです!改正点については、後ほど詳しく説明します。
貸していた土地/貸付事業用宅地等
亡くなった人やその生計一親族が貸付をしていた土地についても、小規模宅地等の特例が可能です。貸付事業用宅地等は、平成30年度に大きな改正がありました。
亡くなる前3年以内に貸し付けた土地については、貸付事業用宅地等に該当しない
↑ここが平成30年・民法改正で変わったところです!
亡くなる直前の入院などのタイミングで個人の遊休地等を無理矢理に事業用に転用するような、悪質なースを防止するために、この制度が設けられました。 昨年の平成30年税制改正の中の「貸付事業用宅地等」の改正にならい、『相続人等による事業継続を守る』という本来の小規模宅地等の減額特例の趣旨から逸脱した適用(節税目的の駆け込み的な適用など)を防止するための改正です。詳細は、後述します。
限度面積及び減額割合
① 特定居住用 限度面積 330㎡ 減額割合 80%
② 特定事業用(特定事業用宅地又は特定同族会社事業用宅地)
限度面積 400㎡ 減額割合 80%
③ 貸付事業用 限度面積 200㎡ 減額割合 50%
が原則ルールです。
例:
•相続税評価額:5,000万円
•地積:400㎡ ならば、
小規模宅地等の特例適用額は3,300万円
計算式:5,000万円×330㎡/400㎡×80%
※定事業用宅地等と一緒に適用する場合 ・完全併用が可能 ・最大で730㎡まで小規模宅地等の特例の適用が可能
・ 貸付事業用宅地等と一緒に適用する場合…200㎡までが限度
例:①特定居住用宅地×200/330+②特定事業用宅地×200/400+③貸付事業用 ・貸付事業用宅地等と一緒に適用する場合…200㎡までが限度 例:①特定居住用宅地×200/330+②特定事業用宅地×200/400+③貸付事業用宅地≦200㎡
改正の目的とその内容
小規模宅地等の特例の改正は、昨年の平成30年税制改正の中の「貸付事業用宅地等」の改正にならい、『相続人等による事業継続を守る』という本来の小規模宅地等の減額特例の趣旨から逸脱した適用 、つまり、節税目的の駆け込み的な適用など防止するための改正です。
亡くなる直前の入院などのタイミングで個人の遊休地等を無理矢理に事業用に転用するような、悪質なースを防止するために設けられました。
改正点は、先にも述べたように、
平成32年4月1日以降の相続・遺贈により取得した宅地等ならば 相続開始3年以内に新たに事業のように供された宅地等を除く、
というもの。これを「3年以内事業宅地等」と呼びます。 一定要件を3年以内事業宅地にみなされない場合もあります。
それは
「一定資産(※)のうち被相続人が有していたものの相続開始時の合計額/新たに事業の用に供された宅地等の相続開始の価格」が15%以下
の場合 です。
※一定の資産
・宅地の上に存在する建物または構築物
・宅地の上で行われる事業・業務に使われていた減価償却資産
まとめ
小規模宅地等の特例を受けると、「個人の事業資産についての相続税の納税猶予および免除」の適用は受けられませんのでご注意を。
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